シャンパーニュのwikiより詳しい簡単なまとめ[3] 6


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シャンパーニュの簡単なまとめ

クリスマスや誕生日など、お祝いごとの席には欠かせないシャンパーニュ(シャンパン)。発泡性のワインなら何でもかんでも「シャンパン」と呼ばれてしまいますが、ここできちんとシャンパーニュについて知っておいて損はないでしょう。

日本語wikiのシャンパンの項目よりもより詳しくを目標に、その基礎についてまた楽しみ方について何回かに分けてまとめてみます。

第3回目最終回は、使用されるブドウと製法、そして楽しみ方についてです。

シャンパーニュののwikiより詳しい簡単なまとめ 連載記事

シャンパーニュのwikiより詳しい簡単なまとめ[1] シャンパーニュ(シャンパン)とは何か?とその歴史について
シャンパーニュのwikiより詳しい簡単なまとめ[2] シャンパーニュ(シャンパン)のエチケット(ラベルの読み方と生産地について
シャンパーニュのwikiより詳しい簡単なまとめ[3] シャンパーニュ(シャンパン)で使用されるブドウ品種と製法、そして楽しみ方について

使用されるブドウ

シャンパーニュを生み出すブドウは、1919年にAOC(原産地統制呼称)によって「シャンパーニュに使用できるブドウ品種は、次の品種とする:ピノ系品種とアルバンヌ、プティ・メリエ」と定められており、また2010年11月22日の政令でも規定され、厳密にこれが適用されています。

Les vins sont issus exclusivement des cépages arbane B, chardonnay B, meunier N, petit meslier B, pinot blanc B, pinot gris G et pinot noir N.
(拙訳)ワイン(シャンパーニュのこと)は、アルバンヌ(白ブドウ)、シャルドネ(白ブドウ)、(ピノ)ムニエ(黒ブドウ)、プティ・メリエ(白ブドウ)、ピノ・ブラン(白ブドウ)、ピノ・グリ(グリ色ブドウ)、そしてピノ・ノワール(黒ブドウ)のブドウ品種からのみとする。

ですが、認められている品種の中でも主要なものは3品種となっており、残りは非常に珍しいものとなっています。

主要品種

シャンパーニュ全域では、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、シャルドネ、この3種類のブドウが栽培面積の99.7%を占めており、市場で販売されているシャンパーニュのほとんどで使用されています。

品種名 説明
ピノ・ノワール
Pinot Noir
ピノ・ノワール栽培面積の約38%を占め、白亜質土壌で比較的冷涼な地域で栽培されており、モンターニュ・ド・ランスとコート・デ・バールでは支配的な品種となっています。
この品種により、赤いフルーツを思わせる香りとしっかりとした構造がワインに与えられるとされ、シャンパーニュでは豊かなボディと力強さをもたらすために使用されています。
ピノ・ムニエ
Pinot Meunier
ピノ・ムニエ栽培面積の約32%を占め、粘土質を含む土壌でブドウにとっては過酷とも思われる気候の地域で栽培されており、ヴァレ・ド・ラ・マルヌでは支配的な品種となっています。
この品種により、酒質の柔らかさと(ワインの)熟成の早さ、フルーティーさがワインに与えられるとされ、シャンパーニュでは親しみある柔らかさ・丸さもたらすために使用されています。
シャルドネ
Chardonnay
シャルドネ栽培面積の約30%を占め、白亜質土壌で日照に恵まれた地域で栽培されており、コート・デ・ブランでは支配的な品種となっています。
この品種により、繊細さ、華やかさ、柑橘類の香り、そしてとりわけミネラル感がワインに与えられるとされ、一般に熟成に時間が掛かることからシャンパーニュでは熟成が必要なシャンパーニュに理想的な品種であると考えられています。
先に挙げた定義には含まれていませんが、これは当時シャルドネがピノ系品種と考えられていたためです。

それ以外の品種

主要3品種以外に、2010年11月22日の政令により主要3品種に加えて次の4品種もシャンパーニュに使用できる品種として認められていますが、約34,000haある栽培面積のうちわずか100ha弱ほど、0.3%の面積でのみ栽培されています。

基本的にアッサンブラージュ(ブレンド)されたシャンパーニュがほとんどとなっていますが、一部に単独で使用されたシャンパーニュが存在するため、参考までに生産者を付記しておきます。

品種名 説明
ピノ・グリ
Pinot Gris
ピノ・グリ約2haほどで栽培。
ピノ系品種で、ピノ・ノワールの果皮がグリ(薄く色づいた、の意)になったピノ・ノワールの変異品種。
グリ・ヴレ(gris vrai)、アンフュメ(enfumé)、フロモントー(fromenteau)とも呼ばれています。


この品種単独でシャンパーニュをリリースしている生産者
デロ・ドゥリュニー(Derot Delugny)
デロ・ドゥリュニー
ピノ・ブラン
Pinot Blanc
ピノ・ブラン約85haほどで栽培。
ピノ系品種で、ピノ・ノワールの果皮が緑を帯びた黄色になったピノ・ノワールの変異品種。
フルーツの香り豊かでシャルドネに匹敵するとも見られているこの品種を単独で使用したシャンパーニュがコート・デ・バールで流行しつつあります。
ブラン・ヴレ(blanc vrai)とも呼ばれています。


この品種単独でシャンパーニュをリリースしている生産者
ローズ・ド・ジャンヌ(Roses de Jeanne)
ピエール・ジェルベ(Pierre Gerbais)
プティ・カミュザ(Petit-Camusat)
デュフール(Dufour)
ローズ・ド・ジャンヌ ピエール・ジェルベ プティ・カミュザ デュフール
プティ・メリエ
Petit Meslier
プティ・メリエ約4haほどで栽培。
シャンパーニュ地方に古くからある古代品種。
他品種に比べ収量(収穫量)が少ないという特徴があります。


この品種単独でシャンパーニュをリリースしている生産者
メゾン・デュヴァル・ルロワ(Maison Duval-Leroy)
メゾン・デュヴァル・ルロワ
アルバンヌ
Arbanne/Arbane
アルバンヌ約2haほどで栽培。
コート・デ・バールに古くから存在する品種。
ブドウの成熟に時間がかかり、他品種に比べ収量(収穫量)が少ないという特徴があります。


この品種単独でシャンパーニュをリリースしている生産者
メゾン・ムタール(Maison Moutard)
メゾン・ムタール

失われた品種

ピノ・ド・ジュイエ (Pinot de juillet)
ピノ・ノワール・プレコス(Pinot Noir Précoce)、つまり「早熟なピノ・ノワール」と呼ばれる黒ブドウ品種で、ドイツではフリューブルグンダー(Frühburgunder)という品種名で呼ばれています。
ピノ系品種ではありますが、先に紹介した2010年11月22日の政令では含まれていないため、シャンパーニュ認定品種から除外されたようです。

ピノ・ロゼ (Pinot Rosé)
この品種もシャンパーニュ地方で栽培されていたことがあるようですが、詳しいことは不明です。
ピノ・ド・ジュイエと同じくピノ系品種ではありますが、先に紹介した2010年11月22日の政令では含まれていないため、シャンパーニュ認定品種から除外されたようです。

ガメイ (Gamay Noir à Jus Blanc)
ブルゴーニュ南部のボージョレ地方で有名なこの品種は、ピノ系品種ではないもののシャンパーニュ地方でも使用されていたことがあります。しかしガメイの特徴がシャンパーニュに合致しないなどの理由から栽培が禁止されることとなり1942年までに引き抜かれる予定でしたが、第二次大戦の影響から1952年まで延期され、それ以降は禁止されている品種となっています。
ただし、こちらの資料によれば、コート・デ・バールのあるオーブ県では一部で栽培がなされている可能性があります。

シャンパーニュの製法

シャンパーニュは、その発泡性を生み出すためにシャンパーニュ方式と呼ばれる、他のワインとは異なる独特の製法が採用されています。

シャンパーニュ一般の製法

シャンパーニュ一般の製法

収穫期を迎えたブドウは全て手摘みで収穫されます。どれだけでも収穫可能というわけではなく、収穫できる上限が定められています。通常収穫量を示す単位は1haあたりの果汁量をヘクトリットル(100リットルを1つの単位としたもの)で表したhl/haが使われますが、シャンパーニュでは1haあたりの収量(収穫量)をブドウの重量であるキログラムが使用されており、上限は10,400kg(約65hl/ha)とされています。

この後、必要な場合はトリ(tris)と呼ばれる選果が行われ、未熟なブドウや腐敗したブドウが取り除かれます。

2010年11月22日の政令により、1haあたりの上限は10,400kgとされ、収量の多い年などに特例で上限が引き上げられることがあるものの、その最大上限は15,500kgと定められています。一般的な収量表記に置き換えると、10,400kg/ha≒65hl/ha、15,500kg/ha≒97hl/haとなります。

収穫前のシャルドネ

垂直式圧搾機(コカール)の例

収穫されたブドウは、ブドウが傷まないように運ばれ、ブドウの果粒を破砕した後に圧搾機と呼ばれるプレス機で果汁が絞られます。この際、黒ブドウはその色素を果皮に含んでいるため、色素が果汁に含まれないように手早く静かに圧搾が行われます。

ブドウ4,000kgから2550Lの果汁が得られますが、最初に搾汁されるのが「キュヴェ(cuvée)」と呼ばれる2050L(これはシャンパーニュ地方で「ピエス」と呼ばれる205Lの小樽10個分に相当します)、ついで2回目に搾汁される「プルミエール・タイユ(première taille)」と呼ばれる500L、合わせて2550Lの果汁がワイン造りに回されます。1993年までは3回目の搾汁も使用可能となっていましたが、現在は禁止されています。

圧搾には主に空圧式と呼ばれる、バルーンを空気圧で膨らませ、それによって圧搾を行う圧搾機が用いられていますが、一部の生産者では伝統的なコカールと呼ばれる垂直式の圧搾機が用いられています。

空圧式圧搾機の例

得られた果汁には固形分などの不純物が含まれる場合があるため、果汁を静置することで不純物を沈殿させることがあります。これをデブルバージュといいます。

非発泡性の白ワインと同じく、糖分をアルコールへと変えるアルコール発酵を行います。生産者にもよりますが、各区画や各ブドウがもつ個性を把握し活かすため、通常区画ごとブドウ品種ごとにタンクや樽を使用し行われています。これにより出来上がったワイン、つまりシャンパーニュの原酒をヴァン・クレール(vin claire)と呼びます。

なおこの発酵に樽を使用しているのは、有名メゾンではクリュグ(Krug)やボランジェ(Bollinger)が挙げられます。

発酵用の小樽、大樽、ステンレスタンク

アルコール発酵が終わった原酒には、鋭い酸味を持つリンゴ酸が多く含まれています。この鋭い酸を抑え、まろやかな酸に変える発酵をマロラクティック発酵といいます。この発酵は乳酸菌の働きによりリンゴ酸を乳酸へと変えるもので、実質的に酸度を下げることとなります。

この発酵を行うことで、ワインが持つフレッシュさが一部失われてしまうものの、ワインの持つ香りをより複雑にする効果もあります。そのため、酸を活かしたい生産者はこの発酵を行わず、酸よりも若い時の楽しみやすさなどを重視したい生産者はこの発酵を行うなど、生産者のワインに対する考え方が如実に現れる工程でもあります。

アッサンブラージュのイメージ

収穫翌年の1〜2月頃、出来上がった多種多様な原酒をを試飲し、生産者の持つイメージにそった香り・味わいとなるようにアッサンブラージュ(ブレンド)を行います。アッサンブラージュされるのは5の工程までで出来上がったヴァン・クレールだけでなく、ヴァン・ド・レセルヴ(vins de reserve)と呼ばれる前年以前に作られたリザーブ・ワインも含まれます。このヴァン・ド・レセルヴは生産者の個性だけでなく、熟成感も与えることもできることから、これをアッサンブラージュするシャンパーニュを決定づける意味合いもあります。

このように新しいワインに前年以前の古いワインを加えるため、多くはヴィンテージ表記のないシャンパーニュとなります。また、このヴァン・ド・レセルヴを20%以下に抑えることでヴィンテージ表記を行ったシャンパーニュが造られています(ヴァン・ド・レセルヴを全く加えずにその年の個性を最大限発揮させることもあります)。ブラン・ド・ノワール、ブラン・ド・ブランなど、様々な種別はこの時点で決定されています。そのため、この工程はもっとも重要な工程の1つともいえるでしょう。

アッサンブラージュを行った後に、ワインに含まれる有機酸の1つである酒石酸をワイン冷却することにより取り除きワインにその結晶が析出しにくくする処理が行われることがあります。これを冷却安定法といい、その後酒石酸の結晶と他の不純物を取り除くためにフェルターを通すことがあります。生産者によっては6の前にもフィルターがけを行うこともあります。

小規模な瓶詰め機

アッサンブラージュされた原酒とともに、主に糖分と酵母からなるリキュール・ド・ティラージュ(liqueur de tirage)と呼ばれる液を添加し、打栓します。これにより次の工程で発泡性が得られることとなります。打栓には、王冠を使用する場合とコルク栓を使用する場合があり、生産者によって異なります。コルク栓を使用する場合は、コルク栓をした後にそれを固定するためにコの字型をした箍(たが)が取り付けられます。

伝統的な打栓機。箍(たが)も取り付けられます

シャンパーニュ製法の中で最も特異な工程がこの瓶内二次発酵です。8で添加されたリキュール・ド・ティラージュによりボトルの中で通算二回目となる発酵が始まり、この発酵で発生する二酸化炭素(炭酸ガス)がボトルの中に閉じ込められワインに溶け込むことで発泡性ワインが生まれます。生じる二酸化炭素は750mlボトルのシャンパーニュで約5Lと言われています。

熟成中のシャンパーニュ

二次発酵で生じた澱とともに熟成が行われます。二次発酵時から地下カーヴでボトルを横にした状態で並べられており、二次発酵後の熟成もそのままの状態で行われます。これは二次発酵で活動した酵母が取り込んだ旨味を酵母の分解とともにワインへと戻す意味合いもあります。

熟成期間は最低でも15ヶ月以上、ヴィンテージ・シャンパーニュでは36ヶ月以上と厳密に定められており、通常上位クラスのものでは更に長い期間の熟成が行われています。

ピュピートルの例

二次発酵で生じた澱を瓶口へと集める工程です。伝統的な手法と近代的な手法の2通りの方法があり、前者の使用が全生産量の約2%、後者が約98%となっています。

伝統的な手法では、ピュピートル(pupitres)と呼ばれる同瓶板に差し込み、毎日1/8回転づつ動かしながら徐々に倒立状態(sur pointe)とすることで澱を瓶口へと集めます。近代的な手法ではジロパレット(gyropalette)と呼ばれる機械で行われています。このジロパレットは504本収納可能なボックスにボトルを入れ、回転・角度・タイミングを制御しながら澱を瓶口へと集めるもので、ピュピートル使用時には3週間〜2ヶ月かかる動瓶作業を1〜2週間前後で行うことが可能となっています。

ジロパレットの例

ルミュアージュにより瓶口への集まった澱を取り除く工程です。瓶口を-20〜-25度まで冷却し澱を凍結させた上で栓を抜くと、約6気圧という高い瓶内気圧により澱と少量のワインが飛びだすことで澱が取り除かれます。

なお、冷却凍結させずにデゴルジュマンを行う伝統的な手法を採用している生産者も少なからず存在しています。

コルク栓を使用しているベレッシュでの手作業でのデゴルジュマン

王冠を使用しているマリー・ノエル・レドリュでの手作業でのデゴルジュマン

デゴルジュマンで澱を取り除いた際に生じる目減り分を補う目的と、最終的な品質調整のためにワインに糖分を加えた液「門出のリキュール(liqueur d’expédition)」が添加されます。これにより出来上がるシャンパーニュの甘辛度が決定されます。

参考 シャンパーニュの簡単なまとめ[2] 1.1甘辛度

ブリュット・ナチュール(brut nature)、パ・ドゼ(pas dosé)、ドサージュ・ゼロ(dosage zéro)と呼ばれるシャンパーニュの中には、全く糖分添加を行わないものがあります。この場合は、糖分を全く含まないワインのみが添加されます。

ドサージュを行った後、コルク栓を打栓した上で針金で固定、さらにキャップシールを装着しエチケット(ラベル)貼りを行い出荷されます。通常ドサージュから出荷までには、数週間〜数ヶ月ほどかけてワインは休ませられています。

シャンパーニュのキャップシールはなぜ長い?

シャンパーニュボトル

ほとんどのシャンパーニュでは、通常のワインと比べてはるかに長いキャップシールが使用されていますが、これにはきちんとした理由があります。

デゴルジュマン時に目減りした分はドサージュ時にある程度は補われますが、ボトルごとに異なる目減り分に一定量のドサージュをすると、出来上がり時に液面の差異がボトルごとにどうしても発生してしまいます。そこでその差異を隠す目的と、よりボトルを豪華に着飾るためにあの長いキャップシールが採用されたとされています。

ロゼ・シャンパーニュ

シャンパーニュはロゼを醸造する方法が複数(アッサンブラージュ法、セニエ法、直接圧搾法)認められている、フランス国内でも唯一の生産地でもあります。それぞれの製法にはそれぞれの特徴があるため、比較することでより楽しむことができるでしょう。

シャンパーニュ ラエルト・フレールによる2種類のロゼ

アッサンブラージュ法

アッサンブラージュ法では、シャンパーニュ一般の製法の⑥にあるアッサンブラージュ工程で、ヴァン・クレールとは別に醸造した赤ワインをアッサンブラージュする方法で、繊細さと軽やかさ、そしてフレッシュさが際立つ手法だとされています。
このアッサンブラージュでロゼを作り出す方法は、このシャンパーニュ以外では認められていない製法です。

セニエ法

セニエ法では、シャンパーニュ一般の製法の②にある圧搾前の破砕後にブドウ果汁をすぐに果皮などの果帽から分離せずに数日間の醸し(macération)を行うことで僅かに色付けを行い、果汁のみを取り出す方法です。これがセニエ(saignée 血抜きの意味)の由来です。果実味と力強さが際立つ手法だとされています。

直接圧搾法

直接圧搾法では、シャンパーニュ一般の製法の②で破砕を行わずにブドウ果粒そのままで圧搾を行うことで、淡い色がついたものです。セニエ法のバリエーションの1つとも考えられますが、こちらの製法によるものはより色合いが淡いものとなります。
なおこちらの製法によるロゼ・シャンパーニュは非常に珍しいものとなっています。

その他の特殊な製法

vieux doséの記載例

通常長い熟成を経て出荷されるシャンパーニュは、シャンパーニュ一般の製法の⑨にある瓶内二次発酵時の澱とともに行うものがほとんどですが、まれに⑬のドサージュを行った後に長い熟成を行うものがあります。ヴュー・ドゼ(vieux dosé)と呼ばれる手法で、通常の熟成とは異なる方法を採用しているということをエチケットに明示されていることがあります。

楽しみ方

収穫から出荷まで少なくとも20ヶ月以上かけて作り出されたシャンパーニュ。心ゆくまで楽しみたいですよね。そのための楽しみ方をご紹介します。

飲み頃と熟成

デゴルジュマンの日付記載例

シャンパーニュは通常出荷時がそのまま飲み頃と言われていますが、もちろん熟成も可能です。「その他の特殊な製法」でご紹介したヴュー・ドゼがまさに購入後に熟成を行ったパターンと同じですが、お好みの飲み頃を探してみるのも1つの楽しみ方ですよね。リリースされた直後のフレッシュさを楽しむのもありですし、1年2年それ以上と熟成させた熟成感を楽しむのもありです。

しかし、ノンヴィンテージ(フランス語ではサン・ザネsans annéeと呼ばれます)のものですと購入後にどれだけの期間熟成させたかは、購入者自身が購入履歴などで管理することでしかわかりませんでした。

近年になって少しづつ増え始めてきたのがデゴルジュマンの日付をバックラベルなどに記載したシャンパーニュです。これによりデゴルジュマン後からどれほどの期間が経過したかが人目でわかるようになりました。少し前までは、デゴルジュマン後には熟成(によるワインの向上)はしないという意見がありましたが、現在ではほとんどその意見も見られなくなったようです。

生産者によっては、通常の熟成期間を経てリリースするシャンパーニュとは別に、同じものを更に長い熟成の後にリリースする場合があります。モエのドン・ペリニョン エノテークやクリュグのコレクションなどがそれにあたります。

通常のドン・ペリニョンが6〜8年の熟成後にリリースされるのに対してエノテークでは15年以上、通常のクリュグのヴィンテージが10年以上の熟成に対しコレクションでは20年以上の熟成が行われており、それぞれ中身が同じでありながらデゴルジュマンまでの熟成期間とデゴルジュマン後の熟成期間が異なる2種類のシャンパーニュとして見ることができるため、興味深い比較ができるでしょう。

熟成方法の違い

温度

クーラーに入ったシャンパーニュ

シャンパーニュを楽しむのは4〜8度が適温とされていますが、熟成を経たものや上位クラスの場合はその熟成感やより深い味わいなどを楽しむために7〜10度くらいの高めの温度で、甘口タイプのものではその甘さを楽しむため4〜6度と低めの温度がおすすめです。もちろん個人個人で楽しみたい温度は微妙に異なりますので、それを探りつつ楽しむのもよいでしょう。

目安としてですが、13度のセラーから出し氷水で冷やした場合、約5分ほどで8度に、約10分ほどで6度、約15分ほどで4度となり、一旦冷蔵庫で冷やした場合(5〜6度と仮定します)は約5分ほどで4度となりますのでご参考までに。

少しでも早く冷やしたいとき

少しでも早く冷やす方法

ワイン会やパーティーなど少しでも早く冷やしたいとき、ありますよね。少しでも冷却時間を短縮する方法が2つあります。
まず1つめは、氷水ではなく氷に塩を直接混ぜたもので冷やす方法です。この方法では-21度まで(理論上は)冷却することが可能となりかなりの時間短縮が図れます。
2つめは絞った濡れタオルをボトルに巻いて冷凍庫で冷やす方法です。こちらも時間短縮が図れますが、いずれの方法も過冷却によるボトル破損の可能性がありますのでくれぐれもご注意ください

他に、最初の1杯分だけを取り急ぎ冷やし、それを楽しんでいる間に残りを冷やす方法もあります。シャンパーニュのボトルを逆さにしネック部分から上をクーラーに入れて冷やすことで、ボトル全体を冷やすよりも早く冷やすことが可能となります。見た目があまり良くないため、これを嫌がる向きもありますが方法のひとつとしてご紹介します。

グラス

フルート型シャンパーニュグラスとシャルドネグラス

シャンパーニュを楽しむときに使われるグラスといえば、フルート型と呼ばれるグラスです。フルート型では、縦の長さで立ち上る泡を目で楽しめ、その少ない表面積で泡立ちを少しでも長続きさせることができます。反面香りを楽しむためにワインを回すことがあまりできないため、フルート型と呼ばれるものの幅に少しゆとりをもたせたグラスが多く見られるようになりました。

シャンパーニュをワインの一種と見て普通のワイングラスを使用するというのも、もちろんありです。泡立ちを目で楽しむことはあまり出来ませんが、目ではなく鼻と口で存分に楽しむことができます。この場合は、シャルドネグラスと呼ばれる辛口白ワイン用のグラスをおすすめします。実際、一部の生産者では訪問時の試飲にこのタイプのグラスで行っています。

他にはほとんどみられなくなりましたがクープ型というグラスも以前は時折使用されていました。このグラスは泡抜けが早いことからパーティーなどでおくび(げっぷ)を出にくくするという効果があるため使用されていたとされていますが、現在ではグラスタワー等でしかみられなくなっています。
クープ型シャンパーニュグラス

シャンパーニュの泡を飛ばす?

シャンパーニュのキャラファージュ

通常の赤ワインや白ワインの非発泡性ワインですと、いわゆる固いワインや閉じているワインから香りを引き出したりほぐしたりするためにデキャンタに移し替えることがあります。これをキャラファージュ(carafage)といいますが、通常のワインだけではなく、シャンパーニュにもこれを行ってより香りを引き出したりすることもあります。移し替える都合上、どうしても発泡性が一部失われ、結果として泡を飛ばすことになるのですが、シャンパーニュも発泡性があるとはいえワインの一種であることにはなんら代わりがないことを考えれば、これも1つの楽しみ方と見ていいのではないでしょうか。

もしデキャンタがない場合は、グラスをもう一つ用意し一方からもう一方へ移し替えることで同じ効果が期待できますので、何かの際は参考になさってください。

なおデキャンタージュ(decantage)というのもありますが、これは古いワインなどで澱とワインを分ける目的で行われるものです。

料理

シャンパーニュの針金でつくられた人形

せっかくのシャンパーニュ、料理もこれに合わせたい!と思うのが人情ですが、シャンパーニュはほとんどの料理と合わせることができる素晴らしいワインです。もちろんしっかりとした肉料理とは少々厳しいところがあると感じられるかもしれませんが、例えばそれも含めたフレンチのコース料理を前菜からデザートまでシャンパーニュだけで通すというのも乙なものですし、また和食との相性も見逃せません。特に天ぷらとの相性は抜群です。ぜひ好きな合わせ方を見つけてみてください。

最後に

3回シリーズでお送りした「シャンパーニュの簡単なまとめ」、いかがでしたでしょうか。簡単とはいいつつも、結果的にかなりの長さとなってしまいましたが、基礎的なもの+αを網羅したつもりです。過不足等については、随時修正加筆していく予定ですので、時間があるときにまた見ていただければ幸いです。

シャンパーニュのお好きな楽しみ方、見つけてみませんか?

更新履歴
2014/04/01 ロゼ・シャンパーニュの製法に「直接圧搾法」を追加、一部誤記を修正
2014/03/05 一部表記を修正
2014/01/24 2010年11月22日の政令の引用と訳を追加

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